味はどこから生まれどこへいく

お客さま商売としての矜持が宿るステーキ
――東京「瀬里奈 六本木モンシェルトントン」

2017年8月 7日

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こだわりのビールには、こだわりの料理が合う――。マスターズドリームが飲みたくなる至高の一品を求め、各地の名店を訪ねる連載「味はどこから生まれどこへいく」。第2回目となる今回は、六本木のステーキハウス「瀬里奈 六本木モンシェルトントン」のシェフ・森田栄作氏が登場する。

A5ランクの神戸牛や厳選された旬の食材を鉄板で焼き上げ、提供する同店。日本人だけでなく、海外からの観光客やビジネスパーソンも多く訪れる同店の森田シェフに、最高の逸品を提供し続けるためのこだわりについて聞いた。

■お客さまの嗜好が変われば、提供する肉も変わる

当店はステーキハウスですので、肉選びには特にこだわっています。ステーキに使用するのは、A5ランクの神戸牛か黒毛和牛のみ。部位もサーロインかフィレしか使いません。

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上質な黒毛和牛は、やはり食べたときの味わいが違います。肉の脂に旨味があり上質で口にひろがる甘みがあります。素材の味を愉しんでいただくステーキでは、とても大事なポイントです。

仕入れた牛肉は、そのまま使わず1ヶ月ほど熟成期間として寝かせます。昔ながらの方法で枝肉のまま低温保存(約1℃の冷蔵庫で寝かせる)し、熟成肉にするのです。そうすることで、肉質が柔らかくなるだけでなく、味もまろやかになり風味が増します。私はこの方法が、お客さまに「肉を食べている」という実感をもっとも味わってもらえると考えています。

私は30歳から瀬里奈で働いています。今年で28年目です。時代が変わるなかで、牛肉に対するお客さまの嗜好も変わってきました。

私が働き始めた頃はバブル時代で、霜が降っていればそれでいいという人が多かったです。でも今は、もっと食べごたえのある「牛肉らしい肉」が好まれています。肉本来の味を味わいたいというお客さまが増えており、ステーキハウスとしては、ますます肉選びにこだわらなければならないと思っています。

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■要望に応じて肉のないコースを作ったことも

ステーキとお酒といえば赤ワインを思い浮かべる人が多いですが、ビールとの相性も抜群です。特にマスターズドリームは心地よい苦味やコク、またキレがあるので、ステーキの脂をスッと洗い流してくれます。当店のようなステーキハウスにはぴったりなビールです。

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今はビールの銘柄もさまざまなものが出ています。お客さまのニーズの変化に対応しているということだと思うのですが、私も長年こうやってお客さまの前に立っていて感じるのは、常に勉強をし続けなければならないということです。

それは料理の技術面だけではありません。先ほど、お客さまの嗜好が時代とともに変わってきていると言いましたが、「モンシェルトントン」ではお客さまの前で料理をします。お客さまがどう感じているか、その反応がダイレクトに伝わります。ニーズの変化に敏感に応えられなければ、いけないと思います。

その意味では、バーテンダーやカウンターのお寿司屋さんに似ているかもしれないですね。特に当店のような業態では、店が提供したいものを提供するというよりも、お客さまが望むものにできるだけ応えてあげることが重要だと思っています。

例えば以前、肉が食べられないお客さまがいらっしゃったことがありました。そのときは急遽、野菜とシーフードだけでコースを作りました。

あるいは、お客さまの要望でローストビーフを作ったこともあります。鉄板でローストビーフを作ると大変時間がかかるのですが、あらかじめその旨を断って、目の前でイチから作っていきました。

どちらもメニューにはない対応で、普段はやらない工夫が必要でした、でも結果的にお客さまはとても喜んでくださいました。出来る限りお客さまのご要望に寄り添う事が忘れてはいけない大事なことだと思っております。

■「NO」を言わないための勉強の日々

お客さまの要望に対して、「できません」と言うのは簡単です。しかし、カウンター越しにお客さまと向き合っている私たちの原点は、お客さまの笑顔を想うことです。

私にとってうれしいのは、帰り際に「美味しかった」ではなく、「楽しかった」と言っていただくことです。美味しいものを提供するのは、料理人として当たり前。お店までわざわざ足を運んでいただくからには、美味しさだけではなく、感謝の気持ちとプラスアルファを提供できなければなりません。

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それは私だけでなく、スタッフ全員で作り上げるものです。最高の料理と最高の接客がなければ、こうして長年続けていくことはできなかったはずです。可能な限りは「NO」を言わないように気をつけていますし、スタッフにもそのように伝えています。

料理に関しては、シンプルを心がけています。味付けは塩コショウを基本とし、素材の美味しさを追求する。それでもお客さまのニーズは刻々と変化するので、私も日々勉強をしていかなければなりません。

振り返って、30年は早かったですね。楽しみながら働いていたので、あっという間でした。お客さまの目の前で、お客さまとコミュニケーションしながら料理をするステーキハウスという仕事が、性格的にも合っていたのだと思います。調理場にこもって作りたいものを追求するスタイルだったら、こんなに続かなかったかもしれません(笑)。

でも、まだまだゴールだとは思っていないですし、もっとお客さまのためにできることはあると思っています。

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<プロフィール>

森田栄作
1959年生まれ。東京・六本木の中心地にあるステーキハウス「瀬里奈 六本木モンシェルトントン」の調理部長。フランス料理店などを経て、30歳から同店に勤務。変化の激しい六本木という街で、食いしん坊の客たちの要望に応え続け、現在に至る

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