味はどこから生まれどこへいく

焼鳥から "YAKITORI"へ。日本の食文化を世界に発信する
――六本木「YAKITORI燃WEST」

2017年12月18日

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こだわりのビールには、こだわりの料理が合う――。マスターズドリームが飲みたくなる至高の一品を求め、各地の名店を訪ねる連載「味はどこから生まれどこへいく」。第4回目となる今回は、六本木の焼鳥店「YAKITORI燃」「YAKITORI燃WEST」の店主・阿部敏昭氏が登場する。

多くの外国のお客様を相手に、六本木から日本の食文化"YAKITORI"を発信する同店。「もともと焼鳥のことは何もわからなかった」という阿部氏に、同店の立ち上げから焼鳥に対する熱い想いまで聞いた。

■六本木から日本の食文化を発信する

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この業界に入ったのは25年前。とある焼鳥チェーンの店長としてキャリアをスタートしたのですが、当時は恥ずかしながら焼鳥のことなんて何もわかりませんでした。しかも、教えを請いたくても、周りは誰も教えてくれない(笑)。自然と、自ら様々な焼鳥屋さんを巡るようになりました。

ガード下の屋台から単価1万円以上の店まで訪れてみて気づいたのは、値段が高い安いじゃなく、素材や技術、焼き方で全く違う仕上がりになるということ。たとえば串への刺し方ひとつでも、肉の味の出方や食感が変わるんです。そして自分で足を運び、観察し、食べて、学んでいくうちに、工程にこだわり、素材選びも追求していきたいと考え「YAKITORI燃」を立ち上げました。店名の「燃」(もえ)は、然(シンプルなモノ)を、火(私たちの愛と情熱)で昇華させるという思いで名付けました。

出店場所を六本木にしたのは、もともと在籍していたお店が六本木で、日本全国はもちろん、世界中からいろいろな方が集まるこの地から、焼鳥をはじめとする日本の食文化を発信していく使命感に駆られたからです。

実際に来日される度にご来店くださる外国のお客様もいて、そんな人にとっては「YAKITORI燃」こそが日本食。だから、いつも絶対に気を抜けないなと思っています。

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■生産者の想いを知っているからこそ素材を活かす

素材選びでこだわっているのは、生産者の方の想いに共感できるかどうか、という部分。せっかく飲食店に来てお食事していただくわけですから、おいしいのは当たり前。それ以上の気持ちの部分で、いかにお客様に満足していただけるかが重要だと思っています。

うちで使っている鶏は、愛媛県いなほ農園さんが愛情を持って育てられた媛っこ地鶏の雌鶏。出荷されてから丸鶏のまま2週間ほど熟成させてから串打ちするのですが、香ばしい脂と凝縮した旨味はこの上ない味わいです。

ほかにも、濃厚な味わいが特徴のたまごは、相模原の昔の味たまご農場さんのもの。肉厚なしいたけは、和歌山県田辺市龍神村の澄んだ空気と湧き水で丹精こめて育てられた龍神マッシュさんのもの。お米は、秋田県大潟村の生産者の方よりあきたこまちを仕入れています。どれも、実際に私が現地まで足を運び、その想いに共感した生産者の方がつくられたものです。

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そんな想いのこもった素材ばかり仕入れているので、我々が調理の際に意識することは"素材を最大限活かす"ということ。

焼鳥は素材の旨味を逃さないために、炭の煙で肉を包むようにして焼きます。 そうすることで素材の持つ本来の旨味を閉じ込めつつ、薫香という香りがつくのでおいしくいただけるのです。

味付けに関しては、部位によって細かく変えています。濃厚な味わいを楽しんでいただきたいつくねとレバーはタレ。モモや皮などは、柔らかく味が入ってくる石垣島の海塩を使用しています。

ひとつひとつの素材に誠心誠意向き合って調理しているので、初めて来られるお客様には必ずおまかせをおすすめしています。一言で焼鳥といっても、タレと塩では当然味わいが違いますし、ものによっては仕上げの際に醤油を塗ることもある。様々な味や食感を楽しめるのも、焼鳥の醍醐味ではないでしょうか。

お酒も、作り手さんのこだわりが伝わり、かつ味わい深いものを用意しています。数あるビールからマスターズドリームの取り扱いを始めたのも、最初は「心が震えるほどにうまいビールをつくりたい」というこだわりや想いに共感したからです。ビールって、そのお店が扱っている銘柄に関係なく、お客様の6割〜7割の方が頼まれるもの。それにも関わらず、飲んだ人に喜んでもらうために、愚直においしさを追求するという醸造家の方の姿勢に心打たれました。

もちろん、味についても相性が良いと思っています。うちは日本産のワインを豊富に扱っていることから、焼鳥にワインを合わせる方が多いんですね。マスターズドリームの柔らかい苦味と膨らみのある香りは、焼鳥と並べても決して負けることがないですし、特にレバーなど濃厚な部位をお召し上がりになるお客様には、おすすめしています。

■次の世代が活躍できる場を作っていく

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またイベントへの参加や音楽フェスへの出店も積極的に行っています。日本全国の焼鳥店と、無類の焼き鳥好きが集まって、2020年に向け"YAKITORI"を日本の食文化として海外に広めることを目指す「焼鳥達人の会」というイベントもそのひとつです。一昨年にお誘いを受けて、その理念に共感し、参加しはじめました。今年の10月に新木場スタジオコーストで開催した第3回は大盛況でした。

この15年の間に、うちから独立して店を構えた者は6人いますが、イベントの際には彼らも集まり、同じチームとして活動を行っています。こうして店を離れたあとも、同じ志のもとで一緒に仕事ができるのは嬉しいものです。

今後の私の役割として考えているのは、今以上に次の世代が活躍できる場を作っていくこと。うちの店で学んだ者たちが地方にも広がっていくことは、焼鳥という食文化を広く親しんでもらうことにも繋がるはずです。これからも、今に満足することなく、常にまだまだ"過程"だと思い、焼鳥と真摯に向き合っていきたいですね。

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<プロフィール>

阿部敏昭
1966年生まれ。東京都出身。映像制作・焼鳥店を経て、2002年YAKITORI燃を開店。2010年YAKITORI燃WESTを開店。休日も焼鳥店・仏・伊・和ジャンルに問わず食べ歩き、研究と絆を繋ぐ外食マニア。

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