味はどこから生まれどこへいく

日々の努力の積み重ねが「うまい」を作る
――東京「銀座 鮨青木」(前編)

2017年5月 9日

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こだわりのビールには、こだわりの料理が合う――。マスターズドリームが飲みたくなる至高の一品を求め、サントリービールの醸造家が各地の料理店を訪ねる連載「味はどこから生まれどこへいく」。その第1回目では、江戸前寿司の伝統を今に伝える「銀座 鮨青木」の二代目店主・青木利勝氏が登場する。

東京・銀座の名店として知られ、ミシュランで星も獲得するなど、国内外から高い評価を受ける同店。創業者である父から江戸前の真髄を受け継いだ青木氏に、サントリー醸造家の山口豊が職人としてのこだわりを聞いた。

■中途半端なものは絶対に出してはいけない

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山口:(トロの握りを口に頬張り)ああ、おいしいです。

青木:トロはね、海苔で巻いてもおいしいですよ。

山口:これは......。海苔と一緒に食べることで、鼻に抜ける香りが豊かになりますね。どんどんビールが飲みたくなります(笑)。

青木:トロみたいに味が濃い握りはビールが合いますよ。脂をすーっと洗い流してくれますから。

山口:わさびの量をネタに合わせて変えるなんてことはあるんですか?

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青木:脂の多いものは多く入れたりしますけど、逆に貝類、いか、白身は少なくしないと効きすぎてしまいます。

山口:そうやってネタに応じて微妙な配分をしているんですね。ビールづくりは、天然素材である麦芽、ホップの状態にあわせて同じ味になるようつくり方を微妙に調整しますが、お寿司はネタにあわせた違う美味しさを提供していく。こうして握られている姿を拝見して、そこが本当にすごいと思います。

青木:その代わり、寿司はすぐに出来の良し悪しがわかります。お客様の顔に全部出るんですよ。美味しいときは笑顔ですし、いまいちなときは「ん?」って顔をされる。

山口:わかるものですか。

青木:はっきり言われなくてもね、わかります。だから中途半端なものは絶対に出してはいけないんです。「今日はあれが食べたい」と言われても、肝心の素材が良くないという日は絶対にあります。そういうときは、頼まれても出しません。「すみません。本日は良い状態のものがございませんので」と断ります。良くないものを出してがっかりされるほうが大変です。この商売には、断る勇気が必要なときもあるんです。

山口:プロの挟持ですよね。うちの会社でも、中途半端な味では出さない、本当に美味しいものを作らなければならないという姿勢が脈々と受け継がれています。

■世界中の料理から学ぶことがある

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山口:長年カウンターに立たれていらっしゃいますが、これだけキャリアを重ねても難しいと感じることはありますか?

青木:私は自分が食いしん坊ですから、どんどん食べていただきたくなってしまうんです。本当は腹八分目で抑えてもらって、次も食べたいなって思ってもらう。それでまた来ていただくっていうのがやりたいんですけど、なかなか難しいですね(笑)。

山口:食べるのがお好きなんですか?

青木:寿司屋だからって何でも食べますよ。和食だけでなく中華もフレンチも食べます。流行りのレストランの研究とかしますよ。地方にも行きますし、海外にも行きます。

山口:それはやっぱり、勉強も兼ねて?

青木:ええ。調理の方法や素材だけでなく、サービスの仕方も見ますし。美味しいものを作るのが私たちの仕事ですけど、お客様に伝えるためには、雰囲気というか、演出も必要ですよね。そういったことも勉強しています。

山口:新しいものに接する機会は大切ですよね。私も2013年から2015年にビールの本場ドイツでビールの修行をさせてもらって、海外のビールづくりに触れられたのは貴重な経験でした。

青木:世界中のビールを飲むと日本と全然違っていて、飲み比べるのが愉しいですよね。

山口:暑いところにはさっぱり飲めるものが多いですし、反対にヨーロッパは涼しいので、味があってじっくり味わえるようなものが多いですね。ヨーロッパでは食事と一緒に飲むというよりも、最初にビールだけをゆっくりと味わう。だから、多少ぬるくなっても美味しくなければならない。

青木:ヨーロッパはビールの香りが強くてね。日本だとビールは冷たいものだという固定概念が強いですけど、そういうのはキンキンに冷やしたらかえってもったいない。

山口:ヨーロッパに行ってみて、日本人は食中酒というか、お酒は食事と一緒に愉しむものという印象が強いんだなとあらためて思いましたね。

■こだわりとは地道なことの積み重ね

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青木:寿司ネタでも最近ようやく「熟成」って考え方が広まってきましたけど、未だに「これ新鮮じゃないんじゃない?」と感じる方はいらっしゃいます。でも冷たいよりも、常温に近いほうが美味しいネタもあるんです。

山口:ビールでは冷たすぎると味を感じにくくなるんです。だから、マスターズドリームみたいに味がしっかりとしているものは、お客様も適温を意識してほしいと思っています。ただ、ビールの難しいところって、1回では飲み終わらないので、グラスに入っている間に、どんどん温度が変化してしまうんですよ。我々ではコントロールできないところなので、仕方のないことではあるのですが。

青木:サントリーさんはすごくこだわっていますよね。生ビールを店に仕入れる際に、いろいろと指導されるんです。サーバーはちゃんと洗浄してください、グラスもきれいに保ってください。そうやってビールを注ぐと、飲み終わったときに天使の輪ができますからと。そう言われると、こちらもしっかりやらなきゃなという気になる。

実際、器具の掃除を怠っているような店で飲むと、味がダメになっているんです。客として行くとわかりますよ。その点、サントリーさんは樽生のアドバイザーの方が店に来て、定期的に点検して、いつでも美味しいビールが飲めるように整えてくれる。私たちも手を抜いているわけではないですけど、美味しいものを提供するには、細かいこだわりが欠かせないということがよくわかってらっしゃるんだと思います。

山口:やっぱり、こだわりっていうのは地道なことの積み重ねですよね。努力を怠ると、どんどん味が落ちていく。

青木:それを毎日やるのは大変ですけど、お互いに努力を欠かさないから、寿司もビールもいいものが提供できるってことですね。

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<プロフィール>

青木利勝
「銀座 鮨青木」店主。埼玉県生まれ。日本体育大学を卒業後、海外で遊学。帰国後、京橋の名店「与志乃」で修業し、その後、父・青木義のもとで職人の腕を磨く。29歳で先代が急逝。二代目主人として「鮨青木」を継ぎ、現在に至る

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