味はどこから生まれどこへいく

職人技の真髄は「手間」に宿る
――東京「銀座 鮨青木」(後編)

2017年6月 6日

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こだわりのビールには、こだわりの料理が合う――。マスターズドリームが飲みたくなる至高の一品を求め、サントリービールの醸造家が各地の料理店を訪ねる連載「味はどこから生まれどこへゆく」。第2回目は前回に引き続き、江戸前寿司の伝統を今に伝える「銀座 鮨青木」の二代目店主・青木利勝氏が登場。江戸前寿司の伝統を今に伝える青木氏に、サントリー醸造家の山口豊が、寿司とビールの相性について聞いた。

■お酒とお寿司の意外な組み合わせ

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山口:お寿司に合うお酒といえば日本酒を挙げる方が多いのですが、青木さんから見て、お寿司とビールの相性はいかがですか?

青木:つまみも握りも、結構なんでも合うと思いますよ。ただ、日本人にとってお酒は食中酒ですから、特にビールは「流し込む」という感じになってしまう。だから初めの1杯2杯は喉越しがいいお酒ということでビールを飲み、次に日本酒や焼酎ということになる。それでも、最近はマスターズドリームのようなコクのあるビールを好んで飲む方も増えてきましたね。

山口:ビールの特徴のひとつとして苦味があるので、味が濃いものですとか、口に残りやすい脂を洗い流してくれる効果があると思います。そういう意味では、お寿司だとトロやウニでしょうし、おつまみでは天ぷらのような油ものにはすごく相性がいいのかなと。

青木:私が思うのは、フランス料理で赤ワインは肉、白ワインは魚というように、ビールもこの料理にはこれ、というのがあったら面白いんじゃないですか。特に、ビールの種類がこれだけ増えているんですから。

山口:ええ。我々もそれは考えています。ビールのいいところって、何にでも合うということだと思われていました。だからこれだけ普及した。でも、サントリーの中にもたくさんのビールがあるように、この料理にはぜひこのビールを、という飲み方も伝えていきたいと思っています。

青木:フランスワインで、「シャトー・ディケム」という甘いデザートワインがあるじゃないですか。ワインにすごく詳しいお客様が、これと小肌が合うんだよとおっしゃっていて、実際にすごく合うんです。そう考えると、これは絶対にビールと合わないという料理でも、意外にぴったりだということがあると思うんです。

■ガリとビールに共通点あり?

青木:ちょっと小肌とマスターズドリームを合わせてみましょうか。

山口:(小肌を口に運び)うん、合いますね。小肌は酸味があるので、マスターズドリームのしっかりした味わいが口の中をリセットしてくれます。どんどん食べられそうですね(笑)。

青木:海老もビールが美味しいですよ。

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山口:この上に載っているものはなんですか?

青木:「おぼろ」と言いまして、海老の味を引き立ててくれます。寿司屋には昔からあるものです。

山口:ぷりっとした甘さが……、やっぱりビールが進みます。

青木:お口直しにガリも召し上がりながら、どうぞ。

山口:ガリって、酸味と辛味と、ちょっとした苦味がありますよね。それで口をさっぱりさせてくれる。初めて気が付きましたけど、これってビールと同じような効果ですよ。

青木:言われてみれば、確かにそうですね。

山口:しかし、そもそもこんなにしっかりしたガリをいただいたのは初めてかもしれません(笑)。

■職人とは手間の仕事である

山口:こうしてお寿司と一緒にビールをいただいていると、青木さんはすごく大切にビールを扱ってくださっているなと実感します。お寿司の美味しさがビールの美味しさと調和して、両方の味わいが最大限に引き出されています。

青木:美味しいものを食べてもらうには、単にネタがいいだけではダメですから。お酒や店の雰囲気といった環境も含めて召し上がっていただかないと、お客様には満足していただけないんです。

山口:昔のドイツはひとつの街にひとつの醸造所があったそうなんです。だから醸造家の目が届く範囲で飲まれ方を管理できた。でも近代化にともなって全国に商品が広まっていくと、目が行き届かなくなってしまうんですよね。私たち醸造家が美味しい中味をつくっても、それを取り扱ってくださるみなさんの努力もセットでないと、本当に美味しいビールは実現できないんです。

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青木:魚屋さんも一緒ですよ。いいネタを仕入れてもらっても、寿司屋が本当に美味しい状態で提供できるようにしないと、お客様には伝わらない。その場の流れとか、お酒とか、雰囲気とか、すべてそろえて提供することによって、初めて満足していただけるんです。

山口:今回、こうしてお話させていただいて面白いと思うのは、素材の状態が100だとすると、それが青木さんのところで150にも200にもなって、美味しいビールと合わせるとさらに何倍にもなる。全部が完璧にそろっているから、これだけ美味しいお寿司がいただけるんだなと感じます。

青木:そうでなければダメですよね。せっかく美味しいネタ、美味しいビールがあっても、ほかのところで殺してしまったら台無しになるわけです。細かいところまで手間をかけることで、さらに美味しさを引き出せる。よく父が言っていたんですが、「職人とは手間の仕事だ」と。

山口:本当におっしゃる通りです。

青木:手間をかけることで美味しいものを提供できる。よく言われました。

山口:だからビールもこれだけ大切に扱ってくださっているんですね。醸造家としてとてもうれしいです。

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<プロフィール>

青木利勝
「銀座 鮨青木」店主。埼玉県生まれ。日本体育大学を卒業後、海外で遊学。帰国後、京橋の名店「与志乃」で修業し、その後、父・青木義のもとで職人の腕を磨く。28歳で先代が急逝。二代目主人として「鮨青木」を継ぎ、現在に至る

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