味はどこから生まれどこへいく

「誰も見たことのない広東料理」を追求する
――東京「新広東菜 銀座 嘉禅」

2019年2月 5日

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多重奏で濃密な「比類なきビール」が存在するならば、料理の世界には「誰も見たことのない料理」が存在する。今回の舞台は、「新広東菜 銀座 嘉禅」。支配人の蛭間伸一氏が、〝新しき〟料理を提供するフィロソフィーを語る。

当店は今からおよそ1年半前の2017年6月、銀座6丁目の外堀通りに面したビルにオープンしました。

最近でこそ、リピーターの方もかなり多くなり嬉しい限りですが、最初の頃は周知に苦労したこともあったんです。銀座という場所柄、レストランだけでなく、バーやクラブ、さまざまな業態の飲食店がありますよね。なので、「入ってみたら新しい中華料理のお店ができていて、驚いた」という方も中にはいらっしゃいました。

そこで、まずは当店のことを知ってほしいと、オープン当初からランチを始めたんです。といっても、ただのランチでは面白くありません。次の「ふかひれランチセット」のメニューをご覧ください。

《本日の2種蒸し点心/薬膳蒸しスープ/ふかひれの煮込み/ライス 漬物/デザート》

こちらは1500円で提供しておりますが、ふかひれだけでなく点心があってデザートもつくというのは、ほかのお店ではなかなか見られないことだと思います。このように、まずはお客さまにご満足いただいて、店を認知していただくことから始めたわけですね。

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嘉禅で提供されるフカヒレ料理のひとつ「ふかひれのあんかけ土鍋ごはん」

実をいえばオープン前、当店のオーナーシェフである簗田圭(やなだ・けい)と「舌のこえたお客さまをターゲットにした高級店をつくろうか」と検討したこともあったんです。一方で、店の名前は早々に「新広東菜 嘉禅」と決めていました。新広東菜というのは、これまでの広東料理と異なる、新しい、まだ誰も見たことのないような料理、という意味です。じゃあ、誰も見たことのないような料理だったら多くの方に召し上がっていただいて、その美味しさや面白さを堪能してほしいよね――といった話になりまして、そのために中身の濃いランチの提供、お子さまから年配の方までさまざまなお客さまに愉しんでいただけるメニューにしよう、との結論になったんです。

■贅沢なふかひれを贅沢に食する

では「誰も見たことのない広東料理」って何? という話になりますよね。

まずは、イノベーティブな広東料理を目指しているわけですから、キャビアやトリュフといった西洋料理の食材を加えることだってありますし、食器も和皿を使うなどこちらも既存の概念にこだわらない姿勢を常に持っています。

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「これまで勤めてきた店ではちょっとでも新しいことをすると、お客さまから『料理長代わった?』などと声をかけられていました。しかし、当店では変化を続けてもそれがない。試みを認めていただけていると感じます」(蛭間氏)

また、盛り付けから店内の雰囲気にいたるまでお客さまの視界に入るもの、場所には常に気をかけています。先ほどのふかひれランチセットの中に、「本日の2種蒸し点心」がありました。普通、点心というと白い皮を想像されると思いますが、2種類とも白では味気ない印象をお客さまに持たれてしまいます。そこで、片方の点心は赤や緑のものにする、というように、彩り、華やかさを演出しているんです。もちろん、この点心だけでなくほかの料理も同じ思いを込めてつくられていますので、お客さまからは女性を中心に「こんな中華料理ははじめて見た」との感想を頂戴していますね。

当然、素材だってこだわっていますよ。

産地でいえば、広東料理の本場である香港からしゃこを仕入れるなど、国内外のさまざまな場所からシェフが自分で食べて本当に美味しいと感じたものだけを食材として取り入れております。また、当店ならではの素材でいえば、ふかひれが挙げられるでしょう。多くの高級中華店でふかひれは取り扱われていると思いますが、そのほとんどは「ヨシキリザメ」という種類のサメから採られたものなんです。これは、性格のおとなしいサメなんですね。しかし、当店で使うのは「アオザメ」のふかひれ。こちらは凶暴なサメで......そう、映画に出てくるような〝人食いザメ〟です(笑)。ヨシキリザメよりも運動量が豊富ですので、ひれの繊維1本1本が発達しており、食べ応えも味わいもしっかりしています。入手が難しいところもあるのですが、そこはシェフの知る独自のルートで可能な限り常時出せるようにしていますね。

ひとつ、このふかひれを用いた贅沢な食べ方をご提案させていただくと、「中華風ふかひれソースのトリュフリゾット」を召し上がっていただければと思います。ふかひれを調理したソースにジャスミンライスを絡め、その上からトリュフをかけたもの。単品でご注文いただいても構いませんが、ふかひれ料理をご注文していただいた方には用意しておりますので、ぜひ「食べたばかりの、ふかひれの味わいが染み込んだリゾット」をご堪能いただきたいですね。

■多重奏な味わいある「ピンクタイガーのクリスピーガーリック炒め」

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もちろん、「誰も見たことのない広東料理」とともに、お酒も美味しく味わっていただきたいです。まずは、前菜とビールを飲んでいただいて、その後はお好みに合わせてワインや紹興酒も愉しんでいただくのもよろしいかと思います。

......ただ当店の場合、最初から最後までずっとビールを飲まれる方も多いんです。そのお客さまから呼び止められて、かけられる言葉が「このビール美味しいけど、銘柄は何?」というもの。そこで「マスターズドリームです」と申し上げると、皆さんご納得の表情を浮かべられますね。

マスターズドリームは、多重奏なうまさを表現されているとお聞きしておりますが、そんなビールとぴったりな料理としておすすめするのが、「ピンクタイガー(エビ)のクリスピーガーリック炒め」(写真)です。エビといえば、クルマエビやシマエビもよく使われますが、最近食材として注目されているのがピンクタイガー。カリッしたころもと柔らかなエビの食感が多重奏で、マスターズドリームと調和するはずです。

最初に申し上げたように、当店はさまざまなお客さまに来ていただきたいとの考えでメニューづくり、店づくりをしています。ぜひ、ビール好きの方にも、いらっしゃっていただきたいです。美味しいビールと一緒に、「誰も見たことのない広東料理」を召し上がってほしいですね。

<プロフィール>

蛭間伸一
「新広東菜 銀座 嘉禅」支配人。東京都心部にある数々の有名中華料理店で勤務し、2018年に嘉禅の支配人就任。

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