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「唯一無二の世界観を持つビール、それが〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉です」 プレモル醸造家・熊谷武士インタビュー

2020年6月 8日

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心が震えるほどうまいビールをつくる醸造家の「もう1つの夢」――マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉が2020年6月9日、発売される。伝統製法の「木樽熟成」由来の"甘く複雑な熟成香"とマスターズドリームの"多重奏で、濃密。"な味わいを掛け合わせるという挑戦はいかにして行われたのか。サントリービール醸造家・熊谷武士が語る。

醸造家は、単に技術を持っていればよいというものではない。「自然の恵み」を徹底的に生かし、ビールの美味しさをつくりこむ、そのための信念、実現したい味わいの「世界観」を描く力が必要とされる。

だから、マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉の開発を担当する醸造家・熊谷武士と話をしていても、「世界観」というキーワードを何度も彼の口から聞くことができる。

「次の機会にまた飲みたくなる。次の一杯がまた飲みたくなる――この我々が目指すビールの世界感をヴァイタートリンケン(ドイツ語)と呼んでいます。〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉はその世界観をしっかりと味わっていただけるものになったと思います。飲んでいただいた後に訪れる、深く長い余韻は、一度口にしていただければ絶対に忘れない味わいだと思っているので、ぜひ堪能していただきたいですね」

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〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉は、ビールの伝統的製法である木樽熟成とマスターズドリームの革新的な独自製法を融合させたもの。熊谷の言葉にあった通り、深く長い余韻がこのビールならではの世界観を形成している。

今回は、熊谷武士に〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉が持つ、奥深い世界観を聞いた。

■ひとつのビールの中に隠れた「引き算」と「足し算」

〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉は昨年に続き、2度目のリリースとなる。もっと美味しい味をつくりこむため、熊谷の支えとなったのがマスターズドリームを愛飲する人々からの声、とりわけ〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉の世界観を理解してくれるファンの存在だったという。

「たとえばマスターズドリームクラブの会員の皆さまから届くメッセージを、私たち醸造家は1つひとつ目を通しています。昨年の〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉が出されたとき最も嬉しかったのは、『これまで飲んだビールで一番美味しい』という率直な声ですね。くわえて『木樽熟成の香りとともに、最後にビールの締りを感じる』『ビールのすっきりさがありながら、樽熟成らしいウッディな香りもある』といったご意見をいただいたことも心に残りました。というのも〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉では、ビールとしての美味しさと、木樽熟成の良さの両方を贅沢に表現したいという想いをもってつくったものなんです。そうした世界感に共感していただいたお客さまがいらっしゃったことは励みになりました」

では、〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉の持つ世界感とは何なのだろうか?

その問いに熊谷は、まず木樽熟成をすることの意味合いから教えてくれた。

「通常のビールにも、熟成工程自体はあるんです。ただ、その主な目的は発酵で出た未熟な香りや雑味を減らすためにビールを寝かせること。いわば『引き算の熟成』といえるかもしれません。対して木樽熟成は、ビールの持つ美味しさをさらに引き出すために熟成させます。こちらは『足し算の熟成』といえるでしょう」。同じような熟成を行うウイスキーをイメージしてもらえればわかりやすいかもしれません。

ただ、ここで話が出たウイスキーとも異なる部分があるのだという。

「ウイスキーの場合、熟成させる中味は蒸留してアルコール度数を高めた液体です。しかしビールの場合、麦芽とホップをつかって酵母による発酵を行った後の状態のものとなり、成分としてはより複雑系となっています。この中味を木樽熟成させることで、これまでにない味わいが引き出せたのです」

こうした「足し算」の末に得られるのが、マスターズドリーム特有の多重奏で濃密な味わいと木樽熟成ならではの甘く複雑な熟成香の融合である。熊谷は「基本的なねらいは昨年の〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉と同じではありますが」と前置きした上で、次のように語る。

「2019年よりさらに良いものを、という思いはやはり強くありました。昨年の場合は手探りの中からはじめた部分もあり、仕込や熟成の条件をようやく見つけられた、という感覚があったのですが、今年は昨年得た現場の経験を活かして取り組めました。そのため、より適切な熟成状態を見極めるのに力を注ぐことができ、昨年の〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉を超える出来栄えになったと思っています」

ここまでの熊谷の話から「どんなビールも木樽熟成させればよいのでは?」といった疑問を持つ読者もいるかもしれない。しかし、彼はその問いに対して首を横に振る。理由の1つは、近代醸造において、木樽熟成という工程があまりにも手間がかかるということ、そしてもう1つはマスターズドリームという「多重奏で、濃密。」な味わいをもつ強いビールがあるからこそ木樽熟成が可能になった、という点にある。

「〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉は、手作業にて1つひとつの木樽にビールをつめたうえで、個性の異なる樽の状態を見極めながら熟成を進めていくことになります。近代の自動化された設備で緻密な管理を行うビールづくりとはまた違った、大きな挑戦となりました」

■時間を経て立つ木樽熟成ならではの香り

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多くの手間と時間を費やし生み出された〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉。その誕生までの過程と同じように、実際に飲む際も時間をかければより複雑な世界観を味わえる、というのが熊谷のすすめる愉しみ方だ。

「冷蔵庫から〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉を出して飲み始めると、時間とともに訪れる変化を感じていただけるはずです。よく冷えた状態では、ビールが持つ締まりのある味わいを感じながらふっと鼻から抜ける香りが愉しめます。これが時間を経て温度が上がると、トップの香りがより感じられ、味わいもまろやかになってきます。そうした違いを愉しみながら飲んでいただければこのビールの奥深さを堪能していただけるのではないかと思います。グラスも、ワインに使うような香りがたまるタイプのものを使っていただければより特徴は感じていただきやすいはずです」

インタビューの最後に、熊谷は次のような開発秘話を教えてくれた。

「普通の商品開発は、競合する商品があって、自分たちがその市場にどう入り込んでいくかを考えていくのだと思います。しかし、〈山崎原酒樽熟成ブレンド〉の場合は、マスターズドリームという一つの完成されたビールと、サントリーウイスキーの象徴である『山崎』という、2つの名を冠するに恥じない、これまでにない美味しさを実現するというのが命題でした。通常のビールと異なり私たちサントリービールにしかできない仕事であるがゆえ、ものすごくハードルが高くはありましたが、結果として『唯一無二』のビールをチーム全員でつくり上げられましたね」

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