スペシャル
2018年10月11日
醸造家の飽くなきうまさの追求によって生み出されたビール「マスターズドリーム」と、世界に認められたウイスキー「山崎」を育む樽とのシナジーによって生み出される、マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉。
2016年から多くのファンを魅了してきたこのビールが、今年もまたリリースされる。「マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2018」が昨年までと同様にプレゼントでリリースされ、さらに10月18日よりマスターズドリームハウスで数量限定での提供がされるのだ。そこで、今年の〈山崎原酒樽熟成〉開発を担当した若手醸造家・岡島高穂に、日本のビールとしては珍しい木樽熟成という工程の面白さと難しさ、そしてビールそのものが持つ魅力を聞いた。
岡島高穂は、サントリーに入社して4年目の「若手醸造家」だ。
「『若手』と呼ばれるからといって、先輩より劣っていて良いわけではありませんので、学ぶべきことをしっかりと見て、自らの五感をフル稼働させ、身につけていくことを自分に課しています。と同時に、若手だからこそできる発想というのもあると思うんです。先輩方から見れば無謀なアイデアもあるかもしれませんが、自分の学びの積み重ねの末に、自分が思い描いたビールをつくっていく――そんなことができるこの仕事は、本当に毎日が楽しいですね」
語り口はもちろん、ビールと向き合う姿勢にも若々しさを見せる岡島。そうした気概を買われたのか、今年の春、生産の現場から商品開発研究部に異動してすぐに〈山崎原酒樽熟成〉の担当になるよう命じられる。
そのときのことを、「ワクワクとした気持ちがあった一方で、プレッシャーもありましたね」と振り返るが、では〈山崎原酒樽熟成〉にはどのような難しさがあるのだろうか?
岡島の前任地は〈天然水のビール工場〉京都ブルワリー。「商品開発の段階でうまくいったものを、いわれたとおりに工場でつくってみても同じ味にできません。素材や環境の微妙な違いを考慮し、適切な設計を考えるというのは大きな学びになりました」
「木樽熟成工程では、樽の中でビールの味が日々、変わっていきます。1つひとつの樽ごとに個性が違っているので、日々の味の変化を捉え、狙いの味を実現するためのベストな条件設定を見極めるのが難しいところです。また〈山崎原酒樽熟成〉の場合、つくるのは年に1度。お客さまからも非常にご好評をいただいておりますが、その1度きりのタイミングでご期待に添えるものをつくり上げていくのも、やはりプレッシャーになりますね」
こうした高いハードルを乗り越えようとする岡島を助けてくれたのが、醸造家たちがこれまで積み重ねてきた有形、無形の財産だった。
たとえば、〈山崎原酒樽熟成〉にしてもほかのビールにしても、その発案時から商品化までにいたる資料、データが残されている。使用する素材や配合、仕込温度といった醸造条件が明記されているのはもちろんだが、なぜこのビールをつくったのか、商品設計において重きを置いたこと、などの「醸造家の思い」もそこには記されている。
「データだけを基にビールをつくろうとしても、それを考えた先輩と同じ味をつくることはできないんです。同じ素材でもその品質には微妙な差があったり、醸造の環境が違っていたりといった側面も当然ありますが、それよりも大切なのはビールをつくる上での『哲学』のようなものが抜け落ちてはいけない、ということ。この〈山崎原酒樽熟成〉をつくる際も、過去の資料から先輩方がどのような想い、考え方で生み出したのかを自分なりに理解して、それでもわからなければ直接お話を伺うこともありました」
先輩が残してくれた数多の財産を享受し、味を進化させる岡島。そもそも〈山崎原酒樽熟成〉自体が、サントリーが持つ財産をふんだんに活かしたものといえる。ビールとウイスキーを両方つくる会社というのは世界的に見ても、極めて少ない。
「なので、〈山崎原酒樽熟成〉は私たちだからこそ生み出せるビールといえますね。特に、日本で木樽熟成のビールを見かけることは少ないです。サントリーという会社の気風を表す『やってみなはれ』の精神そのままに、日本に新しいビール文化を根付かせるべくビールの樽熟成に挑戦した、というのが〈山崎原酒樽熟成〉の原点にあると思っています」
こうした背景から〈山崎原酒樽熟成〉では、日本ならではの、山崎の樽ならではの味が表現されている。
「まず、ビールのベースとなる部分はマスターズドリームと同様に「多重奏で濃密な味わい」を表現しながら、山崎の樽に合うよう、そして日本人の嗜好に合うビールとなるよう、試行錯誤を続けました。また、過去のデータや経験を基に、狙いの味わいを表現できる樽で熟成させています。飲んだあとに鼻に抜ける甘くやわらかな香りと後味のなめらかさが最大の特長です」
岡島は海外の木樽熟成ビールの例を併せて話しながら、より具体的な風味の説明をしてくれた。
まさにビールを熟成させているさなかの樽がこちら。「山崎原酒樽以外にもさまざまな木樽で試醸を重ねています。今回の〈山崎原酒樽熟成〉とはまた個性の違った木樽熟成のビールもいつの日か、お客さまにお届けしたいです」(岡島)
先日、出張でアメリカに行ったときに飲んだ木樽熟成のビールの中には、個性的なものも多くありましたが、この〈山崎原酒樽熟成〉において、私たちは『何杯も飲みたくなるビール』を目指しています。麦芽・ホップ由来のビールらしい味わいを大切にしつつ木樽熟成特有のエステリー(甘く華やか)な香りを持ち合わせたものにしました。アルコール度数は8.5パーセントと比較的高めに設定し、しっかりとした味わいがつくりだせていると思います」
しっかりとした味わいがありながら、何杯も飲みたくなる――〈山崎原酒樽熟成〉のこの特徴から、次のような愉しみ方が挙げられるという。
「あくまでも、私だったらこうしたい、という話にはなりますが〈山崎原酒樽熟成〉は1人で飲むといった愉しみ方はもちろん、家族や友達とゆっくりとした時間を過ごしながら飲んでいただくのも良いと思います。この〈山崎原酒樽熟成〉の味わいをしっかりと感じながら、その時間をみんなで共有して愉しんでいただきたいです。料理と一緒に飲んでも、愉しんでいただけると思います。特に日本では、和・洋・中とさまざまな食事を愉しむ文化があるので、どんな料理でも相性は良いと思いますよ」
そして、〈山崎原酒樽熟成〉2018の出来栄えを、岡島は次のように総括した。
「木樽で熟成していく様子を日々確認し、ベストな中味でつくりこむことができたと感じています。ベースとなっている、ビールの多重奏で濃密な味わいと山崎原酒樽の特長である甘くやわらかな香りが調和し、ビールをゆっくりと愉しめる味わいができました。年に1度しか味わえないおいしさをご堪能ください!」
前述の通り、今年の〈山崎原酒樽熟成〉は数量限定でマスターズドリームハウスでも提供される。自宅で、マスターズドリームハウスで、醸造家の"もう1つの夢の形"が表現された1杯を愉しんでいただきたい。