プロが教える気の利いた手みやげ

「ここでしか買えないからこそ個性が伝わる」
第4回 やついいちろうさん

2018年1月16日

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せっかく飲みの席のお誘いを受けたけれど、"手みやげ"として何を持っていくのが正解なのかわからない......。悩みに悩んだ末に、けっきょく手軽に買える無難な品を買ってしまうこともしばしばなのでは? しかし今回、攻めの"手みやげ"を紹介してくれたのが、お笑い芸人のやついいちろうさん。

やついさんが教えてくれたのは、世田谷区駒沢で1950年に創業された牛肉煮込み専門店・かっぱの「煮込み」。エレキコミックとして毎年数多くの新作コントを披露し、やついフェスに代表される音楽イベントの主催・出演もこなすなど多方面に活躍するやついいちろうさんが、かっぱの「煮込み」を選んだ理由とは?

■余計なものを削ぎ落とした、かっぱの"潔さ"

かっぱの「煮込み」との出会いは、今から10年以上前。駒沢に住んでいる友達と遊んでいたときに、「近くにおいしい煮込みのお店があるから行こう」と誘われたのが最初です。「あんまり喋れないからね!」と念を押されて、「飲食店で喋れないってどういうこと?」と思いながら、恐る恐る店に入ったことを覚えています。

かっぱにあるメニューは、煮込み・ご飯・漬物の3つだけ。昔、泥酔して迷惑をかけるお客さんもいたそうで、なんとお酒は置いていません。店に入ると、有無を言わさずお皿になみなみと注がれた「煮込み」を目の前にドカンと置かれて、それと同時にお客さんは大・並・小の中からご飯の量を即座に答えます。ものの1分と経たずにご飯と漬物が出てきて、ほとんど言葉を発することなく黙々と飯を食らう。

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僕が初めて行ったときは、まだ先代のお父さんが立たれていたのですが、口数が多い方ではないので、ある種の"緊張感"が店内にはあって......。戸惑う人もいるかもしれませんが、僕はこの飯を食べることに特化したお店の"潔さ"に惚れちゃったんですよね。

このときは、かっぱを出たあとに近くの温泉に向かったのですが、当時の衝撃が忘れられず、今では温泉に行く前にかっぱの「煮込み」を食べる、というのが1つの恒例行事になっています。

■"手みやげ"を通して相手のことを知る

お酒と合わせたいと思ったときには、お持ち帰りすることになります。お店でもタッパーを販売しているんですが、周りにはマイタッパー持参で5人前ぐらいを買って帰り、冷凍して毎日の晩酌の肴にしている友達もいますね。

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僕は家で1人飲みするときにも食べますが、やっぱり誰かとお酒を飲むときに持っていくことが多いですね。もっぱらビールと合わせますが、日本酒やハイボールにもよく合うので評判が良くて、僕の周りには"かっぱファン"が沢山いますよ。まだ実際にチャレンジしたことはないんですけど、いつか神宮で野球観戦するときに持って行きたいなあ。生姜が入っているので見た目ほど油っこくなくて、冷たくてコクのあるビールと合わせたらどんどん進むと思います。

もしかしたら、「煮込み」を"手みやげ"にするのは珍しいのかもしれませんが、僕がもらう場合に嬉しいのって、その人が行きつけのお店で買ってきてくれたものなんですよ。どこでも売っているものじゃなくて、その人が好きなものを、その場で一緒に食べたい。たとえば、僕は「煮込み」のほかに、よく行くお寿司屋さんでイカの塩辛を作ってもらうのですが、実際によく食べているものだとお店のことも話せるし、単純に作りたてを持っていくとおいしいんですよ。

だから、その人の個性が透けて見えるようなものをもらうと、相手のことも"手みやげ"を通して知ることができるし、楽しいと思いますね。

■おいしいご飯さえあれば、どんな相手もガッカリさせない

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手みやげに限らないけど、僕は1回1回の食事を雑に取りたくないなって気持ちが強いんですよ。

たとえば、初対面の人と食事をするときに、もしかしたら相手の人は僕といることを苦痛に感じているかもしれない。そこで、僕が適当なお店に連れて行ったら、相手にとってはもう最悪でしょ。でも、たとえ僕の話がつまならくても、旨いご飯が食べられればイーブンには持ち込める。帰り道に「ご飯は美味しかったから、まあいいか」ってなるじゃないですか。

もちろん、僕にとってのおいしいが相手にとってもそうであるとは限りません。それでも、1回の食事を通して、僕の好みや感覚は知ってもらえる。だから、そういう意味でも、食べ物って相手との関係を構築する上で、重要なコミュニケーションなんじゃないかなって思います。そう考えると、手みやげって良いですよね。

やついいちろう

1974年11月15日三重県生まれ。1997年、大学の落語研究会の後輩だった今立 進とエレキコミック結成。毎年精力的に新作コントを発表する傍ら、2012年よりお笑い芸人・ミュージシャン・文化人が混在するジャンルレスの大型のエンタテインメントフェス「YATSUI FESTIVAL!」をスタート。2017年にはNHK朝ドラ『ひよっこ』にも出演するなど、多方面で活躍している。

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