プロが教える気の利いたおもたせ

「食を薦めるときは『背景』に気を使うべし」
第2回 松任谷正隆さん

2017年7月24日

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「あの人は、この味を気に入ってくれるだろうか……?」どんなに自信を持って選んだものでも、つい頭をよぎってしまうのがこの言葉。

しかし、「おもたせには『出会い』や『発見』がある。それを愉しむべき」と話すのが音楽プロデューサー・アレンジャーの松任谷正隆さん。今回、松任谷さんが選んでくれたのが、中華料理店・華興(かこう)の「円満餃子」と越前三國湊屋の「梅焼き鯖寿司」だ。食通としても知られる稀代のプロデューサーは、この2品が持つ”美味しさ”と”クリエイティブとしての食”を教えてくれた。

■食べ比べが「嫌い」を「好き」に変えてくれた

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華興の「円満餃子」は、海老を丸ごと1匹使った”プリプリ感”が特徴。1080円。オンラインショップ(http://www.oec-kakou.com/)で購入可能なほか、東京・北区滝野川の華興本店でも持ち帰りでの注文が可能。

華興の「円満餃子」との出会いは、今から10年以上前。雑誌の「お取り寄せ」企画で、いろいろな餃子を食べ比べてみたんです。僕の場合、そういう企画が終わった後でも、いろいろな餃子を取り寄せ続けます。「もっと美味しいものはないか」ってね。匹敵するレベルの餃子は2、3ありましたが、「これよりも美味しい」と言い切れるものはありませんでした。それだけ、ほかの餃子にはない味で、”孤高の餃子”だと考えています。

この餃子、僕の家の冷凍庫には、いつでも、必ず入っているんです。というか、入っていないとウチの由実さん(松任谷由実さん)が満足しない(笑)。僕も何を食べようかと迷ったときに、これと白いご飯だけで満足できます。特に今回は『MASTER’S DREAM Magazine』の記事ということですが、味わいのしっかりとした美味しいビールと絶対に合うだけの、味に”重み”を持った餃子です。

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越前三國湊屋は福井県の焼き鯖寿司発祥の店。「梅焼き鯖寿司」(1296円)のほか、「照焼き鯖寿司」「しめ鯖寿司」などのラインナップを揃える。オンラインショップはhttp://www.starminatoya.co.jp/

そして、越前三國湊屋の「梅焼き鯖寿司」もまた、10軒以上の鯖寿司を食べ比べしてみて気に入った一品。実は僕、鯖寿司が大嫌いだったんです。でも、美味しい鯖寿司があることを知って、「嫌い」から「好き」に変わりました。

鯖寿司には、大きく分けて生鯖系と焼き鯖系の2種類がありますが、生鯖だと日本酒とか焼酎に合うと思うんです。一方、この焼き鯖寿司は、鯖の香ばしさと添えられた梅、生姜のバランスがとてもいいから、それがビールと一緒に愉しめる。あと、鯖寿司だと高価なイメージを持つ人もいるかもしれませんが、梅焼き鯖寿司は税抜きで1200円と、比較的お手頃なのもいいですね。

■おもたせには「発見」がある

“おもたせの醍醐味”があると僕は思ってて。「カタログギフト」ってあるじゃないですか? 結婚や出産のお祝いを贈ると、その人からの返礼でもらうカタログ。あれ、僕は文化としてあまり好きじゃないんです。というのは結局のところ、「お礼」を自分で注文しているわけですから、何か違うな、と。

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それと比べておもたせは、「発見」があるんです。たとえば梅焼き鯖寿司なら、かつての僕みたいに「実は鯖が嫌いで」という人もいますよね。でも、もらったからには食べようと思って口にしたらハマってしまう、なんてこともあり得ます。もちろん、反対に食べてもらえないことだってありますよ。でも、そういうのを全部ひっくるめて、おもたせの面白さがあるし、カタログギフトで選ぶものでは味わえない出会いもあります。

■「食べることって、クリエイティブな作業なんです」

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おもたせには、もう1つ、面白さがあります。海外に出ている親戚が、久しぶりに日本に帰ってきたとするじゃないですか。そして再び出国するときは、やっぱり「何か持たせてあげなくちゃ」と思います。

でも、これって思いやりや気遣いじゃないんですよ。「どうだ?」っていう感情。「こっちの水は甘いぞ」っていうね(笑)。そして、相手も負けじとカードを切ってくれたら、もっと面白い。

僕はこういう遊びをよくしていますね。ある仲の良い放送作家とは、”レストラン対決”をよくやります。「お前、この店知らないだろ?」と、お互いに知っているレストランを披露し合うんです。

おもたせを食べるときでもレストランでも、一緒に場を愉しむときは、こういう愉しみ方って大事だと思う。同じものを食べるときでも、そのシチュエーションによって美味しく感じたり感じなかったり、ということがあるじゃないですか。ただ単に「これ、美味しいぜ」って薦めるだけではあまり面白くない。

それだけ食べる、あるいは友達とお酒を飲むという行為は、クリエイティブな作業で、「背景」がとても重要なんです。背景というのは、薦め方もそうだし、そこでかけるBGMもそう、あとは家での食事でどんなテレビ番組をながら見するか……それらによって味の感じ方は変わります。僕は音楽のアレンジャーなので、曲の背景をつくる役目です。だから、食べるときも背景に気を使っているんじゃないかな。

松任谷正隆(まつとうや・まさたか)

1951年東京生まれ。4歳からクラシックピアノを習うなど音楽に親しみ、20歳の頃からプロのスタジオプレイヤーとしての活動を開始。バンド「キャラメル・ママ」「ティン・パン・アレイ」に参加。その後、アレンジャー、プロデューサーとして多くの作品に携わる

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