その逸品ができるまで

「好き」の感情が良い仕事にする 理論だけでモノはつくれない
――対談 amadana 代表取締役社長 熊本浩志×醸造家・川崎真吾(前編)

2017年7月24日

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自前の工場を持たない「ファブレス」という形態で、次々とスタイリッシュな家電を世に送り出すブランド・amadana。革新的なデザインの電子計算機や、オールインワンタイプのレコードプレーヤーなど新しい価値を提供するプロダクトを生み出し、さらにマスターズドリームとコラボレーションした家庭用の本格的なビアサーバー「BEERGO」も手がけた。そんなamadana代表取締役社長 熊本浩志とサントリーの醸造家・川崎真吾が「ものづくり」を軸に対談。2人の間にどんな化学反応が起こるのか――。

■つくり手たちの少年時代

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amadana代表取締役社長の熊本浩志は、大手家電メーカーを経て2002年にamadana社(旧:株式会社リアル・フリート)を設立。プライベートでは社会人野球チームの代表兼監督を務める一面も。

川崎:今でこそ、私はビールづくりをしていますが、実は子どもの頃は図画や工作の科目、つくるのが苦手だったんです。

熊本:僕もそうなんですよ! 中学校の「技術家庭」科目でテープレコーダーをつくるキットがあったんです。みんな、ちゃんと完成させているのに、僕のだけ再生しても音が鳴らなくて......僕の実家は街の電気屋なんです(笑)。さすがに電気屋の息子がテープレコーダーを完成させられないのはまずいし、泣きそうでしたよ。自分の不器用さに。

川崎:(笑)私も、一度、分解したおもちゃなどを元に戻せず、家族からは「壊し屋」と呼ばれていました。

熊本:それでも今の川崎さんは、ビールづくりの前線に立っていらっしゃって、モノをつくる側のお立場にいますよね。僕の場合、エンジニアではないんです。理系脳じゃない。今言ったとおり、家が電気屋だったので、小学校、中学校、高校と、それぞれの担任の先生に自分のお店の商品を買ってもらってはいましたけど。その関係が今でも続いています(笑)。

川崎:すごい。小さな頃からセールスマンなんですね。

熊本:人に何かを伝えるのは得意なんです。その点で文系脳。今はamadanaという会社・ブランドを立ち上げていますが、もちろん今でもエンジニアではないから、川崎さんのような方に会うと、憧れの感情が生まれます。

■好きこそ仕事の上手なれ

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川崎真吾はサントリー入社後、酒類技術開発センターや京都、利根川の両ブルワリーでの勤務など、商品開発と醸造の現場を歩んできた醸造家。現在は、商品開発研究部部長を務める。

川崎:光栄です......熊本さんはamadanaを立ち上げる前に家電メーカーでお仕事をされていたと聞きました。やはり、ものづくりをしたかったのでは?

熊本:ええ。「プロジェクトX」みたいなことができるんじゃないかと、熱い思いを持って入ったんですけどね。

川崎:想像と違いましたか?

熊本:新しいモノに対する見方・姿勢が保守的なところに、ギャップを感じてしまいました。というのは、今から20年くらい前、日本にブラウン管テレビをつくるメーカーって3社しかなかったんです。技術の部分での希少性があり、しかも映像の鮮明度で液晶テレビはブラウン管に劣る。だから、「液晶はブラウン管を超えられない」と僕たちは教え込まれていたんです。でも、世界の趨勢に目を移すと、すでに液晶がスタンダードになりつつあるのは明白でした。

川崎:そして実際に、液晶テレビの時代になりました。

熊本:そうですよね。そんな「ブラウン管をつくれるがゆえに、ブラウン管を守ってしまう」というところは、僕がいた会社だけでなく多くの日本のメーカーに当てはまると思うんです。そこに、自分の思いとのギャップが生まれて、後に会社をつくるきっかけになりました。川崎さんが醸造家になられたきっかけは何ですか?

川崎:最初にこの仕事を意識したのは、学生時代にやった居酒屋のアルバイトですね。そのお店の採用条件が「笑顔」と「お酒が飲めること」。お酒が飲める歳になって、好きにもなっていましたから、一発合格でした。そして、お酒の中でもやっぱりビールが好きで。で、お客さまの顔を見てると、本当に美味しそうにビールを飲んでいる。この笑顔をつくりたい、と思ったことが出発点です。

熊本:「好き」って大事ですよね。先ほど会議をしていたんですけど、そこでもちょうど話していたんですよ。「『好き』を持っている人には何をやっても勝てないよ」って。というのは、仕事に対して好きという感情を持ってる人って、同じ好きを持った人を惹きつけちゃう。僕はそれを「周波数」と呼んでいて、周波数が合う人と仕事をしたいと思っています。

川崎:熊本さんは、同じ意識を持ったたくさんの人を惹きつけそうですね。

熊本:でも、前は違う考え方をしていたんです。「こうすれば成功するだろう」「こっちの選択をした方が正しいだろう」って思うこと、ありますよね? 正しいと思った選択肢に「好き」を持った人はいなくても、ひとまず度外視して仕事を進めることもあったんですが、これがうまくいかないんですよ。今、川崎さんとお話ししていて、やっぱり好きという非常にシンプルなことが、とても大事なんだなと痛感しています。

■欲張りのメリット

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川崎:「うまくいかなかった」といわれましたが、熊本さんは成功をどう捉えていますか? 私の場合、成功したって思えることがあまりないんですね。売れたビールがある一方で、失敗作もあったから、会社には迷惑かけてしまったな、と(苦笑)。

熊本:それは僕も同じですね。というか、成功体験なんてない、とさえ思っています。いつも何かが足りないと感じちゃう。その意味のみにおいては、失敗作ばかりなんです。それに、僕は欲張り。たぶん、川崎さんも欲張りなんじゃないですか?

川崎:そうかもしれません。私はビールが好きだから、ビールで日本を変えたい。具体的には、我々サントリービールのファンを1人でも増やしていくことにつきますね。こんな風に夢が大きいから、成功がないと感じるんだと思います。

熊本:いいじゃないですか。僕は、欲張りにはメリットもあると思っています。仕事をよく山登りにたとえますよね? そこで、ある山を登っていても、「ん? 自分が登るべき山は隣の山なんじゃないか?」と気づくことができる。もし欲を持ってなかったら、違和感なくそのまま山を登ってしまいますが、制覇して満足しちゃったら意味がないですよね。

川崎:欲張りだから、いろいろな山に、つまりより良いものがつくれるステージを求め続ける。やっぱり、夢は大きく持つべきですね。

熊本浩志(くまもと・ひろし)

1975年宮崎県宮崎市生まれ。amadana株式会社代表取締役社長。大学卒業後に大手家電メーカーにて家電商品の販促企画、商品企画を担当し、2002年に退社。その後は27歳で株式会社リアル・フリート(現 amadana株式会社)を設立、オリジナルブランドamadanaを立ち上げる。以降、NTTドコモをはじめとする企業とのコラボレーションやパートナーシップを次々に発表し、一気にブランドを浸透させ、2015年には、ユニバーサルミュージック社と協業ブランド「Amadana Music」を発足。世界へ向けて新たな事業展開を加速させ、体験を軸としたプロダクト展開を繰り広げている。

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amadana × MASTER'S DREAM
MASTER'S DREAM「醸造家の夢」に敬意を表し、誕生した本格ビアサーバー。
▼amadana 本格ビアサーバー<BEERGO(ビアルゴ)> 詳しくはこちら。

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