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ビールの肴になるカルチャー

歴史あるミニシアターで愛されているのは? 映画館が独自に用意するフードメニュー

2017年9月29日

多くの映画館ではビールが販売されているが、ビールに合うとっておきのフードメニューも見逃せない。映画館が独自に用意しているメニューを知れば、映画を観る時間、観たあとの時間がより豊かになるに違いない。

■日常に小さな喜びを ホットドッグから読み解く不思議な親和性

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映画館でフードを食べるとき、暗く手元が見えにくいなかでは手軽に片手で愉しめるフードが頼もしい。ポテトフライやポップコーンはその代表格であろう。TOHOシネマズでは、そんな映画ファンたちの望みに寄り添い、ホットドッグを提供している。そしてなにより、パンに挟まれているのがジョンソンヴィル・ソーセージである点に着目したい。

1945年にミシガン湖のほとりの小さな集落で精肉店として創業したジョンソンヴィル。同ブランドは「世界で一番おいしいソーセージをつくりたい......」という創業者の想いから、冷凍肉を一切使わず、生の豚肉だけにこだわり半世紀以上も製造され続けている。片田舎から始まり、いまではアメリカで多くの人々に親しまれている同社のソーセージだが、TOHOとも通じる部分があるのが興味深い。

TOHOシネマズの親会社である東宝株式会社を創立した小林一三は阪急百貨店の大食堂に、若くお金のない客が通うことを歓迎するなど、庶民の日常の中に多くの喜びを作り出してきた人物。一三が大食堂をかまえた1929年は、レストランといえば庶民がそうそう通える場所ではなかった。しかし、日常に喜びがなければ人の生活は豊かにならないという想いから、多くの人々を受け入れたのだ。

大衆に手の届く贅沢を提供し続けることで、両社とも長きに渡り人々に親しまれる存在としてあり続けている。そんな歴史に想いを馳せながら、ホットドッグをビールとともに頬張るのもまた一興だ。

■映画通が通う昔ながらのミニシアターで愛される老舗のサンドイッチ

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「シネマ ジャック&ベティ」は1952年に「名画座」としてオープンした横浜・黄金町のミニシアター。今では少ない「飲食物持ち込みOK」の映画館だ。「名画座」時代、日本の映画館では飲食物の持ち込みOKの映画館が多数あったが、現在その数は減少。支配人の「昔からの常連さんに新しいルールを強要したくない」という思いから「飲食物持ち込みOK」を守り続けている。そんな同館で人気のフードが近所の老舗パン屋「パン工房 カメヤ」のサンドイッチだ。

1925年、和菓子屋として創業したカメヤ。パン屋に転向し、2度の移転を繰り返すも、代々その土地の人々に愛され90年以上の歴史をもつ。しっとりとした食パンで作られる、玉子サンドやハムサンドなど素朴で王道なサンドイッチが人気で、ジャック&ベティでは夕方頃には売り切れてしまうこともあるという。売り切れ後にはわざわざカメヤに出向き、パンを購入してから映画館に戻ってくる客もいるほどの愛されぶりだ。

同館の常連客の中には一日に2~3本を鑑賞する映画通も少なくない。その時のお供は、当然サンドイッチが大半を占める。上映の合間にさっと食べられるいつもの味は、鑑賞した映画の記憶と共に心に残るだろう。

■映画の余韻を邪魔しないシンプルさをもつ「エビのバジルソース」

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映画鑑賞後の余韻を味わうなら、クセの強い場所や料理はいただけない。ユナイテッドシネマ豊洲に併設するカフェ&バーラウンジ「BREATHE」には様々なメニューが揃うが、映画の感想を語らいながら食べるなら「エビのバジルソース」。新鮮な茹でエビをバジルソースにディップして食べるシンプルなメニューで、バジルの風味豊かな旨みがエビとよくマッチする人気メニューだ。

同店は海が見渡せる大きな窓を中心に、内壁やテーブル、カウンターなども無駄なくシンプルな空間に仕上げられているが、映画鑑賞後の余韻を壊さないためにスタッフの接客態度の丁寧さにも力を入れている。クセがなく、シンプルな「エビのバジルソース」には映画鑑賞という体験をより深いものにするための信念が感じられる。

3つのメニューにはそれぞれの映画館が抱える想いが込められていた。映画館にフードが必ずなくてはいけない理由はないからこそ、フードメニューにはその映画館の姿勢が反映されるのかもしれない。その場所で提供されているフードメニューを食べることで、作品だけでなく映画館そのものを感じ、愉しむことができるだろう。

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