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ビールの肴になるカルチャー

中原中也は二日酔いを何に例えた?
ビールが出てくるとっておきの8冊

2017年6月19日

1516年、ドイツで発布された「ビール純粋令」によって、水、大麦、ホップ、酵母がビールの主原料として定められビールの定義が決まった。日本でビールが飲まれるようになったのはおよそ300年後、明治初期の頃。それから100年以上の時を経たいま、ビールは多くの日本人から愛されている。そして、人にとってのありかたも様々。ビール好きに読んでもらいたい8冊を選んだ。

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『蕎麦処山下庵 山下洋輔と三十人の蕎麦者たち』(小学館)
山下洋輔 編著
ジャズピアニストの山下洋輔は冷やし中華好きで「全日本冷し中華愛好会」という団体を立ち上げているが、実はかなりの蕎麦通でもある。筒井康隆やタモリをはじめ、30人が蕎麦を語る山下監修のアンソロジー。タモリは蕎麦屋で飲む時、最初の一杯はビールと決めているという。「季節に関係なく、そば屋には生ビールを置いてほしい」のだが、生ビールがある蕎麦屋は少なく、店に通い詰め、店主をくどいてやっと置いてもらったこともあるとか。タモリの生ビール愛、強し。
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『いしいしんじのごはん日記 1〜3』(新潮文庫)
いしいしんじ著
いしいしんじが5年におよぶ三崎や松本での暮らしを綴った日記シリーズ。もともと食に執着がなかったいしいだが、東京から港町の三崎への転居をきっかけに食の喜びを知るようになる。ビール片手に食べる地元のマグロ、サザエの壷焼き、お好み焼きなど……その日食べたものとささやかな出来事が淡々と書かれているだけだが、食べること、飲むこと、そして生きることの美しさや尊さのようなものが、どんどんあふれてくる。
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『野武士、西へ 二年間の散歩』(集英社文庫)
久住昌之著
『孤独のグルメ』の原作者である久住昌之が、東京―大阪間を2年かけて歩いた記録。地図やネットに頼らず、飲食店には勘や妥協で入るため、大当たりもあればハズレもある。しかし、たっぷり歩いてから口にするビールやお酒のおいしさは、どれもたまらない。とんかつ屋で思わず頼んだ昼ビール、駅のホームでコロッケパンのお供に飲むビール、温泉宿で幕の内弁当をアテに飲むビール……ビールはいつ、どんな時も、酒呑みの味方なのだ。
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『ランチのアッコちゃん』(双葉文庫)より「ゆとりのビアガーデン」
柚木麻子著
仕事と食をテーマにした連作短篇集。短編「ゆとりのビアガーデン」は、オフィスビルにビアガーデンを開いた玲実と、彼女のかつての雇い主で商社社長の雅之の物語。サラリーマンにビールを飲んでもらうため、奔走する玲実。その姿を、仕事も家庭も不調な雅之は苦々しく見つめる。やがて「1日100人集客したら、お前のビールを飲んでやる」と雅之は勝負を仕掛けるが……。ビールで人がどんどん繋がり、幸福になってゆく物語。
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『蛇を踏む』(文春文庫)
川上弘美著
芥川賞を受賞した短編。薮で蛇を踏んでしまった「私」。ある日家に帰ると、女に化けた蛇が、手料理とビールを用意して待っていた。不気味に思いながらも、なぜか料理をつつき、蛇といっしょにビールを飲む「私」だが、やがて蛇から「蛇の世界に入らない?」と誘われてしまう。幻想的な雰囲気の中で、「私」が飲むビールの味だけがリアリティを持つ。川上の手にかかると、ビールも異世界を感じさせるアイテムになる。
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『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(集英社)
前田司郎著
劇作家・映画監督の前田司郎が書く、大人の青春小説。勢いで2万8500円のスキヤキ鍋を買った無職の「僕」。理想の“凄いスキヤキ”を作るため、大学時代の友人ら4人で車に乗って旅に出る。寄り道を繰り返し断念しそうになりながらも、パーキングエリアで買ったうるいとアスパラ、コンビニの豚コマ肉などを使いスキヤキを作る。ビールを飲み下ごしらえする彼らは自由で楽しそうだが、同時に青春の終わりを感じさせる。
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『中原中也全詩集』(角川ソフィア文庫)
中原中也著
詩人・中原中也の詩業がわかる1冊。「渓流」という詩で中也は、ビールの味を「青春のように悲しかつた」と表現している。友人の小林秀雄と最後に飲んだ酒もビールだった。詩作では繊細な感性が光る中也だが、しかし気性は荒く、酒の席で気に食わない相手をビール瓶で殴りつけることもあったとか。ちなみに「宿酔」では、重い酔いが残る朝を「千の天使が バスケットボールする」と謳う。ビール呑みなら理解できるはず。
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『チョコレート革命』(河出書房新社)
俵万智著
『サラダ記念日』で知られる歌人・俵万智の第3歌集。〈缶ビールなんかじゃ酔えない夜のなか一人は寂しい二人は苦しい〉〈地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない〉など、印象的なビール短歌が収録されている。31文字で表現をする短歌の世界。「苦い」や「大人」、時には「喜び」や「切なさ」など様々なワードを連想させるビールは、短歌にもぴったりなモチーフなのかもしれない。
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